研究概要 |
脊索は初期発生の際に神経管と体節の分化に重要な影響を与えていることが様々な報告から指摘できる。また神経管も体節の分化に関与していることが示唆されている。そこで体節の分化に脊索と神経管がそれぞれ異なった働きをするのか,あるいはこれまで示唆されたように同じ働きをしているのか明らかにするとともに体節の分化の過程の中のどの時期のどのような造形運動にかかわっているのか明らかにすることを目的として一連の実験発生学的検討を行った。なお前年度,肢芽と脊索の関係を検討する前に脊髄と体節の関係を明らかにしておく必要がわかったので主に下記のような実験を行った。 体節が分化発生する環境を手術的に変化させ,その中での体節の分化を検討するため,1,神経管と体節の間を内胚葉に至るまでの切開し神経管も脊索も無い環境を作ったところ,術後十時間で体節全体が細胞死を引き起こし,24時間では体節に由来する構造全てが消失していた。2,神経管の正中を通り脊索の脇を内胚葉に至るまでの切開を行ない脊索が無い神経管だけの環境を作ったところ,術後10時間では椎板細胞にのみ細胞死が認められ,24時間では皮筋板が中空のボール状になっていた。七日胚子を筋繊維の標識抗体で染めると筋細胞が不規則な配列を持って中腎原基の真上に広がっていた。十日胚子を軟骨染色し椎骨の発生状況を観察したところ,脊索が切り離された側の椎骨は形成されていなかった。3,神経管を摘出して体節だけの環境を作ったところ,皮筋板の外側約半分が発生しており,七日胚子の筋繊維の染色でも神経管から離れた位置に筋細胞の発生が認められた。 以上の結果から椎板の形成は明らかに脊索の支配を受けていると言える。一方皮筋板の形成に関してはどちらか一方が存在すれば発生する事がわかった。しかし脊索だけの環境で形成された場合外側に偏って形成されるのは興味ある所見である。脊索を切除した場合筋細胞が神経管の腹側に降りてしまうため神経管と脊索の影響が内側と外側にそれぞれ分担し合っているのか否か今後検討しなければならない問題である。
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