ギャップ結合gap junction(GJ)の主要構成蛋白であるコネクシンconnexin(CXN)の蛋白あるいは遺伝子レベルでの解析が進められているにもかかわらず、GJ形成機序は未だ十分には解明されていない。近年、細胞接着分子cell adhesion molecule(CAM)がGJ形成に関与している可能性が示唆されている。CAMの一種であるカドヘリンcadherins(Cad)を発現しない培養細胞系では、CXN分子の合成が行なわれても、GJの形成は認められない。しかし、Cadをコードしている遺伝子の導入によってCadの発現を誘起させると、GJが形成される。この結果はGJの形成に先立って、CAMを介する細胞の接着が必要であることを示唆しているが、コネクソンの凝集とそれに引き続くGJ形成の機序は不明である。我々は、活発なGJ形成が観察されるマウス新生仔肝と肝部分切除後の再生肝のCXNとCadの動態を免疫細胞化学的に検討した。 生後6〜10日令のマウス新生仔肝あるいは再生肝を摘出、凍結超薄切片(電顕用)と準超薄切片(光顕用)を作製した。常法に従って、抗CXN32あるいは26のポリクローナル抗体と抗Cadモノクローナル抗体による二重標識を行った。 新生仔肝と肝部分切除後の再生肝の肝細胞ではGJの形成が盛んに行なわれていた。CXNの免疫反応はGJのみならず、接着結合の領域の形質膜にも免疫反応が検出された。抗Cad抗体との二重染色によって、接着結合の領域では両者が共存していることが明らかになった。この所見は、肝細胞ではカドへリンあるいは接着結合がGJの形成に直接関与している可能性を強く示唆した。
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