平成4年1月よりカニクイサル一頭を用い週二回10%(W/V)四塩化炭素オリーブ油混液を1年間背部皮下に注入し実験的肝線維症を作製した。カニクイサルは4週毎に麻酔下無痛状態で肝生検と採血を行ない採取した肝組織について以下のような検索を行なった。血中の血管基底膜結合性コラーゲンは四塩化炭素投与開始後12週で正常の4倍に達したが、1旦正常レベル付近まで低下した。生検組織像に於てもこの時期肝組織像の改善が見られた。しかし、6か月目で再度生検像の悪化と血中血管基底膜結合性コラーゲンの増加をみた。生検組織を電顕観察したところ類洞周囲腔に不連続的に基底膜様構造が観察された。同時期における他の肝機能(GOT・GPT等)には異常が認められなかった。一方、肝硬変・慢性肝炎患者の血清濃度を測定したところ正常平均値の10倍以上の高値を示した。 これら所見は血中血管基底膜結合性コラーゲン測定が肝線維化の診断に大変有効であることを示している。6か月までの結果は第65回日本生化学会大会に於て「組織中における基底膜関連コラーゲンの変化」と題して発表した。この動物は平成4年2月8日麻酔下無痛状態で潅流固定し現在肝臓はじめ各種組織の電顕的・免疫組織化学的検索をすすめている。肝臓の肉眼所見は表面・割面とも小結節性肝硬変像を示していた。電顕観察の結果基底膜が連続的に肝類洞周囲腔に観察されたが、コラーゲン細線維の増生は中等度であった。 今後、四塩化炭素投与動物の肝より血管基底膜結合性コラーゲンをコードする遺伝子のクローニングならびに全塩基配列の解析を行うことを計画中である。
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