1.発生期平滑筋細胞の微細構造変化 ラット小腸、尿管平滑筋について、透過型電子顕微鏡によって得られた切片像について画像解析を行い、胎生後期から生後第3週にかけての各種小器官の発生経過を定量的に解析しており、細胞骨格細線維、粗面小胞体ゴルジ装置の漸進的減少傾向と、収縮性細線維、周密野(dense area)、周密体(dense body)の増加傾向をみた。隣接する細胞間の周密野は相対侍し、あたかもデスモゾーム様の構造を示すが、細胞径の増加とともに位置的にずれを生じ、成体における特徴を表すにいたる。 2.血管平滑筋の発生学的検討 胎生15日以降、骨格筋や心筋組織中に、血流を伴った既存の血管から独立した、いわゆる血管芽細胞索が観察され、幼弱な内皮細胞の間質側に特殊な細胞が接着しておりこれが、血管平滑筋の起源と考えられている周細胞へ分化する可能性を示唆した。 トリプシンによる結合組織除去法による走査型電子顕微鏡的観察によって、出生前後の腸間膜細動脈には分岐型の紡錘形状の細胞が不連続な粗な層として観察された。以後次第に突起の数を減じるとともに、長紡錘形あるいは紐状にかたちを変え、周密な筋層を形成することを明らかにした。 3.実験条件下における平滑筋の分化 未だ予備的研究段階に留まっているが概ね球状を呈する膀胱、管状器官としての小腸などについては、自発的運動開始以前に成体に近い配列様式を示すことを明らかにした。今後他動的運動が平滑筋の形状にどのような影響をもたらすかを検討する計画である。
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