研究概要 |
ラット腸間膜および小腸壁に分布する筋型血管について、胎生末期から生後4週に至る平滑筋層の形態分化の過程を明らかにするため、走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)および免疫細胞学的解析を行った。伴行する腸間膜動・静脈は授乳開始とともに急速に径を増し、生後4週には胎生末期の約2倍に達する。また腸管壁の枝も同時期に著しく径を増すとともに、、その縦方向への成長は、小腸横径の増加と比例すると仮定して、約10倍以上にも及ぶと推測される。 腹腔内にDTT(dibuthylthreitol)-collagenase加生理食塩水を注入後材料を摘出、NaOH処理を行い、漿膜中皮と結合組織を除去し、SEMによる観察を行った。授乳開始にいたるまで腸間膜動脈筋層は一層の密に輪走する長さ約30umの紡錘形状の筋細胞で構成される。一方同静脈外輪層は不連続で不規則偏平な筋細胞から成る。 生後10日に至るも小腸壁の動静脈はさらに未成熟な段階にあり、平滑筋細は球形或いは短い楕円体状あるいは短紡錘状を呈する。腸間膜動脈筋層は胎生末期から出生早期にかけて一層であるが、次第に厚さを増し生後4週には3-4層に達する。筋層の成長にかかわる筋細胞の増数要因を解明するため、腸管膜伸展標本に抗アクチン抗体およびS-期の細胞核に特有なBromodeoxiuridineの免疫染色を施した結果、授乳開始とともに、筋層内でかなり高い頻度で平滑筋細胞の分裂が起こること、一部は血管周辺の線維芽細胞様の未分化細胞が筋層の成長に関与することが示唆された。これら成長期血管平滑筋細胞についてのTEMによる解析を行い収縮成分を中心に細胞小器官の分化成長過程を明らかにした。
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