種々の免疫反応における免疫担当細胞と内皮細胞との相互関係を微細形態学の立場から解析を進めてきた。一年経過した段階で以下に述べる結果と実績を得たので報告する。 同種肝臓移植において拒絶開始時よりみられるリンパ球と内皮細胞との接触は、経過が進むにつれてその数を増すが、結合は緩く、接触間にわずかなglycocalxがみられるにすぎない。一方リンパ節移植では移植後10日前後に高位静脈の出現とリンパ球のホーミングがみられるが、その際のリンパ球と内皮細胞の接触は肝臓移植の場合に似て緩かった。この接触には現在盛んに研究が行なわれている細胞接着分子が深く関与していることが推測された。その微細局在を詳細に解析することが、本研究の根本的な解明に通じると考えられたため、接着分子のなかのICAM-1を取りあげ、その発現を高分解能SEMで検索を進めようと試みた。そのためUW液という肝臓保存液を用いた新しい方法を開発しICAM-1の局在を明らかにすることに成功した。この内容は、priorityを得るためrapid communicationとして欧文誌に投稿し受理された。本年はこの方法を移植臓器に見られる免疫反応の解明に応用する予定である。 マクロファージとリンパ球やmast cellとの相互作用、脾臓自家移植時のリンパ球と内皮細胞の接触は前に述べたものと異なり、明確な微細構造が形成された。このことは、接触が細胞が本来持つ機能を発現するひきがねになっていることを示唆する。しかもその際も接着分子が間接的に関与していることが推測された。この問題も昨年開発した方法を用いて詳細に解明を進める計画である。
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