研究概要 |
グルコースは,代謝の其質として,きわめて重要な役割をはたしている.ヒトを含む高等動物では,グルコースは血液によって体内の隅々にまで供給されている(血糖).一方で,特殊に分化した組織細胞の集合体である高等動物では,「血液-組織関門」が存在し,血液成分の自由な流入が阻害されている部位がいくつか存在する.脳(血液・脳関門),眼(血液-眼関門),胎盤(胎盤関門)などがそれである.本研究では,これらの関門部位における関門内へのグルコース輸送の分子機構を,形態学的なアプローチにより解析した.グルコース輸送体の各アイソフォームに対する特異抗体は,アイソフォームに特異的な合成ペプチドを抗原として家兎で作製した.一部のものについてはアフィニティー精製して用いた.ラット胎盤関門と,ラット血液-眼房水関門においては,2層の上皮細胞層(合胞体細胞ないしは,毛様体上皮細胞)が関門をなす.私は血液-組織関門に特に多量に存在しているGLUT1グルコース輸送体が,この関門をなす細胞の細胞膜に多量に局在するのを明らかにした.しかも関門のそれぞれの側のコンパートメントに面する細胞膜に特に多量に存在した.2層の上皮細胞層同士はきわめて良く発達したギャップ結合で結ばれていた.ラット胎盤での予備的な実験では,このギャップ結合はコネクシン26からなっていた.したがって「GLUT1グルコース輸送体→コネクシン(26)→GLUT1グルコース輸送体」という順で,グルコースは2層の上皮細胞層からなる血液-組織関門を通過すると推定される.
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