研究概要 |
急速凍結置換法や急速凍結乾燥法を応用して、ラット副腎髄質とマウス骨髄の超薄切片を作成した。クロム親和性細胞と巨核球についてエネルギーの分散型X線分析装置を装備した分析電顕微鏡で元素分析し、アミン貯蔵果粒の金属元素組成を検討して次の結果を得た。 1.クロム親和性細胞について 急速凍結置換した副腎髄質細胞は凍結置換剤に2%オスミウム-アセトン液を使用したものではアドレナリンが産生細胞の果粒は円盤状で電子密度が低い。一方、ノルアドレナリン細胞は球形果粒で電子密度が高く明らかにアドレナリン果粒と区別できた。凍結置換剤にオスミウムを除いて純アセトンのみ使用した試料でも、アドレナリン細胞よりもノルアドレナリン細胞の方が電子密度が高かった。元素分析を行うとアドレナリン果粒ではP,S,Cl,Kを含み、ノルアドレナリン果粒ではP,S,Cl,Kと高濃度のCaが検出された。従ってCaがアドレナリンとノルアドレナリンの果粒では異なっていることが明らかになった。さらに急速凍結乾燥した試料でも、アドレナリン果粒は電子密度が低く、ノルアドレナリン果粒は電子密度が高かった。元素分析は凍結置換法よりも凍結乾燥を応用した試料ほど感度が高く、ノルアドレナリン果粒のCaのピークが大きくなった。またアドレナリンとノルアドレナリンの両方の果粒に少量ながらMgも含まれることが明らかになった。 2.巨核球について 凍結置換した成熟巨核球のアミン貯蔵果粒は高いMgとPを含み、低濃度のKとCaを含んでいた。ところが、未熟な巨核球のアミン貯蔵果粒ではMgはほとんど含まれずに、KとCaであった。従って巨核球のアミン貯蔵果粒はまずKとCaを蓄積し、次に果粒の成熟するにつれてMgを濃縮することが明らかになった。
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