研究概要 |
初年度に引き続き,胎生期造血の変遷をマクロファージの関与と造血細胞死の視点で明らかにする目的で,胎生8日から11日のマウス胎児ならびに新生児の骨髄からHPMA親水性樹脂切片を作成,光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察し,次の新しい知見を得た。 1)卵黄嚢造血期の食細胞 卵黄嚢造血は胎生8日から始まり,原始赤芽球が卵黄嚢から胎児血管内へと循環しはじめる。胎生10日の血管腔内には赤芽球に混じり大型の単核細胞が存在する。血管腔の単核細胞は球形ないし卵円形で直径9から10mumで,細胞表面に長く迂曲するフィラメント状突起を多数有し,細胞膜直下に明調液胞が見られる。単核細胞は変性細胞断片を含む封入体を持つスカベンジャーマクロファージである。肝臓発生以前の循環血液中にスカベンジャー機能を持つ食細胞が存在することが明らかになった。同じ超微形態を有する単核食細胞は,血管腔以外に腹膜腔などの胚内体腔にも出現する。肝臓造血発生以前に血管腔ならびに胎児体腔に出現する単核食細胞は,その直接のオリジンとして間葉細胞から分化する可能性が超微形態学的に考えられる。 2)骨髄造血の発生と食細胞 新生児骨髄では支持細胞の形成する細胞網工中に血液細胞が散在し,その大多数は顆粒球で成熟好中球が大多数を占める。好中球には,染色質の核膜への高度凝集,核膜のヒダ状突起,核ポケットの形成などアポトーシスの形態学的初期兆候を呈する好中球が多く,食細胞に捕食された好中球も少なくない。捕食された好中球は自己水解小体の破壊によって細胞構造が大型食胞内で一気に崩壊する。出生直後の大腿骨で、フリーのスカベンジャーマクロファージは骨髄洞様血管腔と造血部の細網細胞網工中に出現する。遊走性マクロファージに加え,骨髄造血部の細網細胞が活発な食作用を呈し,食作用の直接の対象となるのは,アポトーシス好中球である。細網細胞が骨髄形成時には積極的にスカベンジャーとして機能する点が他の胎児性造血組織と明らかに異なる。
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