研究概要 |
ラットを空腹状態にして,股靜脈からMCTおよびLCTの中心靜脈栄養剤を0.5mlづゝ注入し,直ちに,肺,脾臓,筋,腸間膜を一部切除,型のごとく電顕観察用に固定,脱水,包埋を行った。超薄切片を電顕的に観察して次のような結果を得た。MCTもLCTも各組織内の毛細血管の内皮細胞表面に脂質粒子として付着しているのが観察されたが,MCTよりもLCT投与の方が,内皮細胞への粒子付着頻度は高かった。このことは,両トリグリセリドの脂肪酸の鎖長の差に起因するものと考えられた。また,MCT投与では,脂質滴が血管内皮細胞の表面に付着する部に,特に,骨格筋組織の内皮細胞において,細胞膜と脂質滴との間を連結するような多数の線維構造の存在が観察された。これは,内皮細胞表面に存在すると考えられているリポタンパクリパーゼとLCTの相互作用を示唆する形態学的な所見ではないかと考えられ,今後この点を解明していきたい。検索した全ての組織の毛細血管に同一の所見が得られたわけではなく,脂質滴が付着する毛細血管内皮細胞は,肺,筋組織のものが著明で,臓器特異性が見られるようである。このことは,リポタンパクリパーゼの局在が臓器により異るのではないかということを示唆する。 空腹状態のラットに,LCTおよびMCTを経口投与後,上記と同様の組織を電顕観察用に固定,脱水,包埋して超薄切片を作製し電顕的観察を行った。その結果,LCT投与後,毛細血管内腔には,きわめて稀に,脂質滴(粒子状)が認められたが,内皮細胞表面に付着する像は観察されなかった。MCTでは,血管内腔にも全く脂質粒子を観察できなかった。したがって,今後は,LCTおよびMCTの経靜脈注入による研究を中心に,その消失過程を電顕形態学的に進めていきたい。
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