研究概要 |
この研究の目的は、コラゲネース処理により単離したラット涙腺細胞の蛋白(ペルオキシダーゼ)分泌と細胞膜電気的容量の変化(開口放出による膜面積の増大)の測定から蛋白分泌の制御機構を解明することである。平成5年度は、下記のような研究結果を得た。 1.単離涙腺細胞のペルオキシダーゼ分泌(林 曠) 単離涙腺細胞をムスカリン受容体を刺激するカルバミルコリン(10^<-5>M)、β受容体を刺激するイソプロテレノール(10^<-5>M)投与により、一時間あたり非刺激時の2〜3倍の分泌をもたらした。注目すべきことはIP_3-Caを細胞内メッセンジャーとするカルバミルコリン刺激よりcAMPをメッセンジャーとするイソプロテレノール刺激の方が分泌効果が強い、またいずれの刺激も細胞のペルオキシダーゼ含有の10%以下しか分泌しないことである。 2.パッチクランプ法による膜容量の計測(西山明徳) パッチクランプアンプ(List社、EPC-7)、パーソナルコンピューター(NEC社、PC9801)、ロックインアンプ(NF社、5610B)を組み合せ、(1)Time domain technique,(2)Computer-aided method,(3)High resolution methodの3測定法を確立し、マスト細胞および単離涙腺細胞の分泌刺激時の膜容量変化を求めた。いずれの方法によってもマスト細胞では膜容量の著明な変化を測定することができた。しかし、単離涙腺細胞では変化を得ることができなかった。 3.考察(西山明徳) 単離涙腺細胞で分泌刺激時、膜容量の変化が得られない理由は現在のところ明らかでない。最大刺激となる高濃度の分泌刺激に対して一時間あたり10%以下のペリオキシダーゼ放出しか得られないことは、単離過程において蛋白分泌反応が著しく低下したものと推測される。今後、単離膜細胞標本作成の改善とHigh resolution methodの改善を行い、蛋白分泌制御機構を解明したい。
|