研究概要 |
Patch-clamp whole-cell法によって単一ラット顎下腺腺房細胞のイオン性膜電流を記録すると、無細胞外Ca^<2+>下にacetylcholine刺激やinositol trisphosphate(IP_3)の細胞内投与によってK^+およびCl^-電流が細胞内Ca^<2+>依存性に、振動性に生ずるので、IP_3情報伝達系で細胞内Ca^<2+>放出が振動性に発生することが知られる。この振動性Ca^<2+>放出にIP_3がどのように関わるかを明らかにするため、申請して購入したケージド物質照射装置を用いて、細胞内投与したケージドIP_3を紫外線照射、活性化させ、それによって生ずる膜電流を記録して、以下の結果を得た。 (1)発生する電流(K^+,Cl^-)はすべてIP_3によって細胞内から放出されるCa^<2+>による、(2)一回の照射(500μ秒)で、K^+電流は二相性に生ずるがCl^-電流は一相性であり、振動しない(3)電流の発生は、K^+電流第一相、Cl^-電流、K^+電流第二相の順である、(4)K^+電流第一相に相当する電流は欠落することがあるが、他の二つの電流は常に存在する。 これらの結果は、IP_3によるCa^<2+>放出がprimerとして作用してCa^<2+>誘発性Ca^<2+>放出による振動をひきおこすと考えるより、むしろ直接に振動発生に関与すると考えさせる。
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