ATP、ADPなどのアデニンヌクレオチドやアデノシンに代表されるプリン体は細胞膜上の特異的受容体を介し、平滑筋の収縮・弛緩、神経伝達、膵・唾液腺などにおける外分泌促進、肝における糖原分解、血小板凝集などの多彩な生理、薬理活性を発揮する。プリン体受容体はアデノシン、AMPをリガンドとするP_1受容体とATP、ADPをリガンドとするP_2受容体とに大別される。本研究ではプリン受容体の情報伝達系を解析し、さらにそれらのcDNAクローニングを行ない受容体分子の構造決定を試みた。最初に、イヌA_1受容体の部分cDNAをPCRにより得、これをプローブとしてラット肝cDNAライブラリーをスクリーニングしP_1受容体の全長をコードとするcDNAクローンを得た。次にこれをプローブとしてP_2受容体のクローニングを試みたが陽性クローンを得られなかった。そこで次にアゴニストに対するイノシトールリン酸産生反応を指標とする発現クローニング法を用いて、P_2受容体cDNAのクローニングを試みた。約100クローンを1グループとして1000グループをスクリーニングしたが陽性グループを検出できなかった。このため発現クローニング法によるクローニングは困難と考え、G蛋白質共役型受容体間での保存性の高い第3及び第6膜貫通部に相当するdegenerateプライマーを用いたPCR法によるクローニング法に切り替えた。PCR法により約40個のフラグメントをクローニングすることに成功し、このうち2クローンが新規のG蛋白質共役型受容体の部分cDNAであった。クローニングした既知の受容体cDNA中にはA_1受容体が含まれた。新しい受容体を一過性に哺乳類細胞に発現させ、P_2リガンドに対する反応を検討したが、陽性反応はみられなかった。現在、これらの受容体に対するリガンドを検索中である。
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