スローKチャネルは膜電位の脱分極によって活性化する電位依存性ゲーティングを示し、その活性化過程には10数秒要する。ツメガエル卵母細胞発現系は、部位特異的変異導入した遺伝子などの機能を迅速に実験・解析できるという利点とは裏腹に、この細胞に対する2電極電位固定法は電気生理学的観点からみると、多くの欠点を持っている。その一つである長時間安定な記録が困難であるという点を改善するためのシステムを完成した。この方法の特徴は振動などの雑音に強いだけでなく、細胞内灌流も可能な点である。リーク・サブトラクションのためのP/4なども可能となった。事実、この方法で数時間の連続記録が得られた。電流注入電極および電位記録電極として銀-塩化銀電極を直接刺入できるため電極インピーダンスが小さく、電極トラブルの確率も極めて低い。但し、電位固定の速度が予想に反して遅いという欠点が見いだされた。この点に関して現在検討し、改善方法を検討している。 膜貫通領域のロイシン残基(Leu^<52>)をイソロイシンで置換することによって活性化速度が変化した。ゲーティングのキネティクスを検討し、2、3の指数関数で近似できることが明らかになった。一方、Leu^<52>をアラニンで置換することによって野生型とくらべ活性化過程に大きな変化が認められなかった。ロイシンとイソロイシンは異性体の関係にあり、いわゆる“安全置換"の範疇にはいるにもかかわらず、機能の変化が認められた。一方、アミノ酸残基の体積が大きく異なるアラニンでは変化がわずかであった。これらの結果は単純な立体構造による効果では全く説明がつかない。イオン透過路の構造との対応を検討中である。
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