研究概要 |
卵巣ペプチドホルモンのレラキシンは子宮平滑筋の収縮抑制を及ぼすが,その細胞内情報伝達系の詳細は未だ明らかにされていない。細胞内cAMP濃度を上昇させ.プロテインキナーゼA(PKA)経由の効果であることが推定されている。昨年までに我々は.Mnの一過性投与後.レラキシンでは抑制効果は減弱するが,イソプレナリンでは逆に増強することを見出した。 今年度は,以上の結果をより詳細に検討するために.db cAMPとフォルスコリンを用い検討を行なった。エストロゲン処理後3日のラットの子宮縦走筋は.卵巣側に近い部位ではその活動電位は.プラトー電位だけのものが多く.中間の部位では.バースト状のスパイク電位のものが多い。卵巣側部位は.中間部位よりもβ作働薬に対する収縮抑制効果が小さく.外液に0.2mM MgあるいはMnが存在しても抑制効果は増強されず,両者には明らかに薬物応答性の相異があった。Mn一過性投与を.Mg‐freeのKrebs溶液中に0.6mM Mnを30分間還流させることにより行なった。中間部位ではMnの一過性投与後db cAMPでは抑制作用は弱くなり.フォルスコリンでは.反対に強くなった。卵巣側部位では.全く効果がなかった。また.この時のPKA活性をリン酸化基質Kemptideを用いて調べると.フォルスコリンとdb cAMP共に.収縮抑制度と対応した活性化が見られた。 以上の結果から.β効果の一つはMg.Mnイオンの表面膜安定化作用を増大し.他方.高濃度のMnは細胞内に入って情報伝達系に関与する酵素等の作用を修飾するものと考えられる。以上の結果をふまえ.今後.収縮.細胞膜電気活動の生理的指標に加え細胞内Mg.Mnの濃度変化.PKA活性.cGMP変動等の測定を併用し,レラキシンとβ作働薬の作用機序の比較検討を行なう予定である。
|