研究概要 |
卵巣除去ラットに17βエストラヂオールを注射し,3日後の子宮縦走筋摘出条片について収縮・膜活動を記録した。またCa/Mg蛍光指示薬(mag-fura 2AM)を細胞内に負荷し細胞内Mg濃度を測定し,以下の実験結果を得た。(1)mag-fura 2とMgの解離定数を2.0mMと設定すれば,Mg欠除クレブス中に浸した筋条片の細胞内自由Mg濃度は380μMと算出される。Ca欠除・40mM Kのイオン組成に15mM Mgを添加した潅流液に筋条片を10分浸すと,細胞内Mg濃度は420μMに増加し,この濃度はその後筋条片をMg欠除クレブス液中に戻して後1時間は保持される。(2)電気刺激により誘発された収縮のdb cAMP,8 Br cGMPによる抑制は,上記による細胞内Mg濃度増加処理によって増大した。Mg欠除クレブス液に1.2mM Mgを添加した場合には細胞内自由Mgは変化しない。15mMgを添加すると添加時に細胞内Mgは僅かに増大するが,Mg除去によりコントロール値まで減少する。従って細胞内Mg上昇とその維持には細胞膜の脱分極が必要条件である。(3)レラキシンによる収縮抑制効果は細胞内へのMn負荷により減少することを以前報告した。Mg・Ca欠除,40mM K,0.6mM Mnのイオン組成により,仮定的に細胞内にMnを負荷するとdb cAMPの収縮抑制効果は減少するが,8-Br cGMPの効果は増大することが見出された。(4)以上の実験結果は子宮筋の抑制性信号系が細胞内Mgにより賦活されることを示唆している。その濃度は生化学実験において用いられているMg濃度より遥かに小さい量である。細胞内のMn濃度の測下は目下困難である。少なくともMn負荷についての実験結果から考え,レラキシンの効果においてcGMPの関与は否定される。
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