研究概要 |
平成4年度は、延髄孤束核(nucleus tractus solitarius,NTS)の脳血管収縮機能にN-methyl-D-aspartate(NMDA)receptorが関与しているか否かを調べた。 1.NTSへNMDA(100nl,10pmole)を微量注入し、脳血流の変化を調ベた(n=9)。大脳皮質の血流量はNTSへのNMDA微量注入側で38±4より27±4ml/100g/min(mean±SE)に有意(P<0.01)に低下し、脳血管抵抗は2.6±0.3より4.1±0.7mmHg/[ml/100g/min]へと有意に(P<0.01)上昇した。 2.1の実験でNTSへNMDAを微量注入後の脳血流の変化を調べた際、同時に側頭筋の血流量を測定した(n=9)。側頭筋の血流量は有意(P<0.01)に上昇し、血管抵抗は有意に(P<0.05)低下した。これにより、NTSへNMDAを微量注入した効果が有効であることが裏付けられた。 3.NTS内にNMDA receptorのantagonistであるD,L-2-amino-5-phosphovalerate(AP-5,500 pmole)を注入し前処置した後、1と同様の方法でNMDAのNTSへの微量注入を行い脳血流量の変化を調ベた(n=9)。脳血流量、脳血管抵抗は有意な変化を示さなかった。 4.NTS内にnon-NMDA receptorのantagonistである6,7-dinitroquinoxaline-2,3-dione(DNQX,100 pmol)を注入し前処置した後、1と同様の方法でNMDAのNTSへの微量注入による脳血流量の変化を調べた(n=10)。大脳皮質の血流量は微量注入側で38±4より27±3ml/100g/minに有意(P<0.05)に低下し、脳血管抵抗は2.6±0.3より3.7±0.4mmHg/[ml/100g/min]へと有意に(P<0.01)上昇した。 以上の結果よりNTS内のNMDA receptorは脳循環の調節に関与している事が判明した。
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