研究概要 |
平成4年度は、延髄孤束核(nucleus tractus solitarius,NTS)の脳血管収縮機能にN-methyl-D-aspartate(NMDA)receptorが関与しているか否かを調べ,平成5年度はNTSよりの脳血管調節の脳内神経経路を明らかにするため,尾側腹外側降圧野(caudal ventrolateral depressor area,CVL)と吻側腹外側昇圧野(rostral ventrolateral pressor area,RVL)との脳循環調節の脳内神経経路を調べた。 1.(1)NTSへNMDAを微量注入した時、注入側の大脳皮質の血流量は有意に(P〈0.01)低下し、脳血管抵抗は有意に(P〈0.01)上昇した(n=9)。(2)NTSをNMDA receptorのantagonistで前処置した後では、NTS化学刺激による脳血流量減少反応は消失した(n=9)。(3)NTSをnon-NMDA receptorのantagonistで前処置した後では、NTS化学刺激で脳血流量は有意(P〈0.05)に低下した。以上の結果よりNTS内のNMDA receptorは脳循環の調節に関与している事が判明した。2.(1)CVLをL-glutamateで化学刺激すると、刺激同側の脳血流量は有意(P〈0.01)に低下し、脳血管抵抗は有意に(P〈0.01)上昇した(n=9)。(2)両側頚部交感神経を切断した後(n=10)や(3)RVLの神経細胞の活動を阻害した後(n=11)では、CVLの化学刺激で脳血流量・脳血管抵抗は有意な変化を示さなかった。以上の結果よりCVLによる脳循環の調節はRVLと頚部交感神経を介している事が判明した。RVLもCVLと同様に脳血管収縮機能を持っている事が私達により既に明らかにされているので、CVLよりRVLへは脳循環に関しては交感神経興奮性経路がある可能性が示唆される。また、NTSよりCVLへ交感神経興奮性経路がある事は既に多くの研究者より明らかにされているので,NTSによる脳血管調節はその脳内神経経路としてCVLとRVLを介し、頚部交感神経を通じて行なわれている事が示唆された。
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