平成5年度の研究では、以下の成果が得られた。 1 気管平滑筋活動に影響を与える求心性入力について、系統的に検討した。 1-1 シアン注入による末梢化学受容器の刺激は気道収縮を誘発した。 1-2 椎骨動脈から炭酸ガス飽和生食を注入して、中枢化学受容器を刺激すると、気道収縮が誘発された。 1-3 ところが、椎骨動脈から窒素で飽和した生食を注入して、延髄に低酸素負荷を与えると、気管平滑筋の緊張は逆に抑制され、気道は開大した。 1-4 肺伸展受容器を興奮させると、気管平滑筋は弛緩反応を示した。しかし、迷走神経を切断した後に、肺伸展受容器を興奮させると、逆に、気管平滑筋はゆっくりとした収縮を示した。この逆説的反応の作用機序は解明できなかった。 1-5 気道の刺激受容器の興奮は、気道収縮を誘発した。 1-6 下肢からの求心性入力を電気刺激にて興奮させると、気管平滑筋は弛緩した。 2 しゃっくりが延髄内の電気刺激で誘発されることを発見した。その部位は、延髄腹側の網様体の限局しており、疑核の外側であった。誘発されたしゃっくり反射は、吸気相で強く、呼気相で弱い傾向を示し、臨床知見と対応するものであった。バクロフェンはGABA-Bのアゴニストで、しゃっくりの治療薬として最近よく使われるが、誘発されたしゃっくり反射に対しても、抑制効果を示した。
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