遊離膵腺房標本を窒素ガスによる刺激物質のごく短時間噴出で局所刺激する方法を画像解析法と組み合わせて確立した。この方法は刺激物質投与量とCa^<2+>transientの定量的解析を可能にする。Ca^<2+>増加のホットスポット及び指揮細胞の存在の可能性は少なく、各々の細胞が独立して反応し得る。適当な濃度範囲の刺激物質で局所刺激した場合、Ca^<2+>が隣接する細胞に環状に伝播していく画像がしばしば見られた。細胞間ギャップ結合の透過性を減少させるheptanolを作用させると、CCK-8刺激によるCa^<2+>の細胞間伝播が抑制されたことから、細胞間伝播にギャップ結合が関与していると思われる。腺房細胞ヘの微小ガラスピペットの刺入は困難で、また高濃度Ca^<2+>をピペットに充填すると先端にCa^<2+>の結晶が生じ、細胞内のinjectionがますます困難となった。従って細胞膜可溶化物質のdigitoninを次に用いた。これを基底膜近傍に局所的投与して細胞外Ca^<2+>を流入させることで細胞内Ca^<2+>を上昇させ、隣接細胞への波及を見たが、高濃度でギャップ結合が閉じたためか隣接細胞への伝播は認められていない。Ca^<2+>測定に用いた細胞の電子顕微鏡観察を検討中であるが、現在エポン包埋まで可能となった。trimmingし、超薄切標本を得ることが次の課題である。他の細胞内signal transduction因子の役割についてはピペットの刺入が困難なため別の方法を模索中であるが、cyclic AMPについては直接的な関与は薄いと思われる。結論として、刺激物質によって各細胞のCa^<2+>濃度が上昇し、上昇したCa^<2+>はギャップ結合を通って隣接細胞に伝播し、腺房全体として同期したCa^<2+>濃度上昇が起こる。しかし、細胞膜破損などである特定の細胞のCa^<2+>濃度が生理的範囲を逸脱するほどに上昇した時は、ギャップ結合は閉鎖し、高まりすぎたCa^<2+>が隣接細胞に波及するのをむしろ防いでいるものと考えられる。Ca^<2+>の細胞内濃度はかなり厳密に調節されていると考えられる。
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