研究概要 |
1.神経が正常に働いている愽動下の心臓(ネコ)を用いて心筋組織間ノルエピネフリン濃度への短時間冠動脈閉塞による局所心筋虚血の影響を調べた。申請者らの開発した心臓ダイアリーシス法を用いて心筋組織間ノルエピネフリン濃度を計測した結果10分間の虚血はその部のノルエピネフリン濃度を152pg/mlまで増加させたが非虚血部のノルエピネフリン濃度は75pg/mlと変化しなかった。虚血部のノルエピネフリン濃度の増加に神経終末からの再吸収が関与しているか否かを検討した結果,神経性ノルエピネフリン再吸収の減弱によるものではないことを見出した。 2.麻酔下ネコを用い,神経が正常に働いている愽動下の心室を用いて心筋組織間アセチールコリン濃度を計測し,迷走神経の電気刺激の効果を調べた所10Hzの刺激で596pMから12210pMへ著増した。しかし、刺激後は一過性に対照値よりも低下した。節遮断剤の影響をC_6を局所並びに静注することによって検討した結果,局所投与ではアセチールコリンの上昇を防止出来ないが,静注することにより防止出来ることが判明した。心筋組織間アセチールコリン濃度は刺激頻度に比例して増加した。これらの所見から,心筋を支配している節後迷走神経終末からアセチールコリンを放出していることが明らかとなった。 3.X線装置より冠血管(内径100μ〜1000μm)への交威神経刺激の効果を検討するための実験を変更し,肺血管への効果を検討した。その結果,動脈径は200〜500μで減少したがこれ以下では減少しないことが判明した。α-ブロッカー投与後には動脈径は著明に増加したが,β-ブロッカー投与後には動脈径は刺激によって著明に減少した。これらの所見から冠動脈径も肺動脈と同様,αとβ受容体によって収縮と拡張の2重制御が示唆された。
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