急速眼球運動発現の脳幹経神機構ー垂直Burster-driving neuronの存在部位と発射特性ー

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670062
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 福島 菊郎 北海道大学, 医学部, 助教授 (70091486)
• キーワード: 前庭眼振 / 垂直眼球運動 / カハール間質核 / Burster driving neuron / ネコ / muscimol

研究概要

前庭眼振が3次元空間内の頭部の回転平面に対応して特異的にその平面で発生することはよく知られているが、この回転平面特異性の神経機構は未だに不明である。水平性の前庭眼振についてはOhkiら(1988)は舌下神経前位核及びその近傍に存在するBurster-driving neuron(BDN)が前庭急速相の発現に重要であることを報告した。これらのニューロンは水平半規管から興奮性入力を受け水平性の前庭眼振中に特徴的な発射パターンを示して水平のバーストニューロンを駆動する。しかし垂直性の前庭眼振については同様なニューロンがどこに存在するか、まだどのような発射特性を有するかその詳細は不明のままであった。本研究は覚醒ネコを用いてこれらの解明を目指した。その結果、下向きのBDNの必要条件を備えるニューロンは、カハール間質核に一致して発見された。この領域には、垂直方向の眼球位置信号を有するバースト・トーニック及びトーニックニューロンが多数存在するが、下向きBDNはこれらのニューロンと混在して発見された。下向きBDNの発射の特徴は、(1)自発々射頻度が眼位関連ニューロンと比較して低く不規則で、(2)反対側の前半規管から興奮性入力を、主に2シナプス性に受ける。(3)下向き急速眼球運動(前庭眼振、視運動性眼振の急速相とサッケード)に約30msec先行してバースト発射し、それは急速眼球運動中にも持続する。(4)上向き或は水平性の急速眼球運動中には、バースト発射をしないか、或いはしても眼球動運に遅れてバーストする。更に(5)この領域にGABA作動薬のmuscimolを両側性に微量(0.3ug)注入すると下向き急速眼球運動の発現が消失した。これらの結果は下向きBDNが下向き急速眼球運動の発現に関与することを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] Fukushima K.: "Ocular torsion produced by unilateral chemical inactivation of the interstitial nucleus of Cajal in chronically labyrinthectomized cats." Neurosci.Res.13. 301-305 (1992)
• [文献書誌] Fukushima K.: "The interstitial nucleus of Cajal is involved in generating downward fast eye movement in alert cats." Neurosci.Res.15. 299-303 (1992)
• [文献書誌] Fukushima K.: "Impairment of vertical eye movement produced by chemical deactivation of the interstitial nucleus of Cajal and activity of eye movement-related neurons in chronically labyrinthectomized cats." Acta.Otolaryngol.(Stockh). Suppl.
• [文献書誌] Fukushima K.: "The neuronal substrate of integration in the oculomotor system." Prog.Neurobiol.39. 609-639 (1992)
• [文献書誌] Fukushima K.: "Head-neck sensory motor system." Oxfor University Press,New York, 748 (1992)
• [文献書誌] Fukushima K.: "Vestibular and brain stem control of eye,head and body movements." Japan Scientific Societies Press,Karger,Tokyo, 466 (1992)