研究概要 |
本年度の前半は昨年度から引続いているカルモジュリンのNa-Ca交換電流に対する作用のまとめの実験を行った。すなわち、従来のカルモジュリン阻害剤と異なる作用機序を持つルテニウムレッドを細胞内潅流し、交換電流が阻害されるかとどうかを調べた。ルテニウムレッドは高濃度でも交換電流を抑制しなかった。W-7,Trifuluoperazine等のカルモジュリン阻害薬は、交換電流とともに、Na電流を抑制することが分かったので、その抑制機序が交換電流と同じかどうかを調べた。Na-Ca交換電流は細胞膜内側をキモトリプシン処理するとCa感受性がなくなることが知られている。そこで、キモトリプシン処理をした後、W-7を投与したところ、Na電流は抑制されたが、Na-Ca交換電流は抑制されないという結果を得た。もし、W-7がNa電流にもNa-Ca交換電流にも同じ機序で抑制しているとすれば、キモトリプシン処理後もどちらも同じ結果になるはずである。このことは、W-7の交換電流に対する作用部位が細胞内に存在して、Na電流のとように抑制されるはずである。このことから、W-7の抑制の作用機序はNa電流と交換電流とでは異なると結論した。これらの結果は論文にまとめ、現在投稿中である。 次に山形大学から、福島県立医科大学に移り、装置を組立た。そこで、細胞外液MgイオンのNa-Ca交換電流の抑制効果を調べた。Mg濃度を1mMと10mMに固定し、それぞれの時、細胞外液のCa濃度を1,2,10mMに変化させて、細胞内Na、20mMとの間に発生する交換電流の大きさを測定した。Mg1mMと10mMでは、1mMの時の電流が明らかに大きかった。ラインウェーバー・バークプロットから阻害の様式を調べると混合型阻害であることがわかった。さらにグラフから阻害薬の結合定数(Ki値)を調べると、17mMであった。これは、同時に得られた、Caの結合定数1.7mMの10倍である。そこで、生理的濃度のMgはNa-Ca交換をほとんど抑制していないと結論した。
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