研究概要 |
(1)カメおよびコイの網膜水平細胞にガラス管微小電極を刺入して細胞内記録を行い、電極に充填した薬物を電気泳動法により細胞内に注入しギャップ・ジャンクション開閉状態の変化を観察した。環状AMPや環状GMP,そして一酸化窒素(NO)の前駆体であるアルギニンの細胞内注入により著明な入力抵抗の増大が観察された。 (2)蛍光色素ルシファー・イェローを細胞内情報伝達系の諸物質と共に水平細胞内に注入し、色素が隣接細胞へ拡散する程度を蛍光顕微鏡下で観察した。環状AMP,環状GMP,あるいはアルギニンの注入により色素拡散(dye-coupling)の著明な抑制が観察され、ギャップ・ジャンクションの遮断を形態学的にも確認した。 (3)上記と同様の方法を用いて各種のNO合成酵素阻害剤N^G-mono-methyl-L-arginineやNω-nitro-L-argininemethyl esterをアルギニンと共に水平細胞内に注入したところ、アルギニンによる細胞入力抵抗の増大は抑制された。また細胞内に注入したルシファー・イェローは隣接細胞へ拡散し、アルギニンによるギャップ・ジャンクションの遮断がNO合成酵素阻害剤により抑制されたことが形態学的にも確認できた。これらの結果から、網膜水平細胞にNO合成酵素が存在する可能性、およびNO-環状GMP系が水平細胞間ギャップ・ジャンクションを抑御している可能性が強く示唆された。 (4)NOと同様に可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化すると報告されているアラキドン酸の細胞内注入を行ったところアルギニンと同様に著明な水平細胞の入力抵抗増大が観察された。またルシファー・イェローをアラキドン酸と共に水平細胞に注入したところ、蛍光顕微鏡下で刺入細胞のみが観察され、アラキドン酸によるギャップ・ジャンクションの遮断を形態学的にも確認した。
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