1.第三脳室腹側前部(AV3V)と、室傍核(PVN)にdopamine(DA)を局所投与し、そのADH分泌促進効果を脳室内投与の場合と比較するとPVN投与は脳室内投与よりも効果が大きいが、AV3V投与は効果がなかった。しかし、DA受容体阻害薬をAV3V、PVN、又はventral tegmental area(VTA)に局所注入し、浸透圧刺激で惹起されるADH分泌に対する影響を調べると、AV3V投与はこれをほぼ完全に抑制した。VTA投与も有意な抑制効果を示したが、PVN投与は効果がなかった。これらの結果は、DA神経がAV3VやVTA領域で浸透圧性ADH分泌の情報伝達物質として働くことを示唆している。DAのAV3V投与でADH分泌が刺激されないのは、充分量のDAが内因性に既に存在する為なのかも知れない。 2.Prostaglandin(PG)の脳室内投与によるADH分泌はDA受容体阻害薬で抑えられず、逆にDA投与による分泌もPG産生阻害薬投与の影響を受けなかった。従って、DAとPGの双方が浸透圧性ADH分泌に促進的に係わるにせよ、両者の働く系は相互に独立していると考えられる。 3.脳室近傍の弓状核に6-OHDAを局所注入し、この領域のcatecholamine(CA)神経を壊すと、浸透圧刺激によるADH分泌が著しく増大した。6-OHDAは視床下部組織のnoradrenalineを減少させた。DA濃度は有意には変わらなかったが、これらの結果は、Tuberohypophysial Dopaminergic神経を含む弓状核領域のCA神経が浸透圧性ADH分泌を抑制することを示唆している。従って、脳室周囲には浸透圧性ADH分泌を促進するCA神経のみならず、抑制するものも存在する、と考えられる。 4.弓状核を含む視床下部組織に浸透圧刺激下でADH分泌を抑制する系のあることは、in vitroの実験でも示唆された。
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