発熱の発達については、発熱が生後何日目から起こる、といった現象面での研究はみられるものの、その根底にある機構に関する系統だった研究は成されていない。即ち、発熱は発熱物質が脳内でプロスタグランジ(PG)E_2を産生させ、体温調節系の神経細胞がPGE_2を受容し、体温調節遠心路を介して、末梢器官に伝達されて発現するのであるが、これらの各コンポーネントがどのように発達してくるのかは不明である。そこで本研究では、ラットを用いて、胎生後期から成熟するまでの間に、発熱物質による脳のPGE2産生能、脳内PGE_2受容部位、脳内PGE_2投与による体温調節反応がどのように発達してくるのかを、生化学的、組織学的、生理学的手法を用いて明らかにすることを目的とした。本年度は次のことが明らかになった。 1.エーテル麻酔下で、生後7日齢ラットの視床下部にガイドカニューレを挿入し、直腸温プローブを装着した。麻酔から回復後、PGE_2100ng投与に対して緩やかな直腸温の上昇が見られたが、その程度は成熟ラットと比較して弱いものであった。 2.PG合成阻害剤で前処置した7日齢ラットでは、PGE_2100ng投与に対して約2.5Cの急激な直腸温上昇がみられた。 以上の結果から、生後7日齢ラットにおいてもすでにPGE_2があることが明らかになった。さらに、視床下部破壊によるPGE_2生産能も7日齢において存在することが示唆された。
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