発熱は発熱物質が脳内でプロスタグランジン(PG)E_2を産生させ、体温調節系の神経細胞がPGE_2を受容し、体温調節遠心路を介して、末梢器官に伝達されて発現する。しかし、これらの各コンポーネントがどのように発達してくるのかについては明らかでない。そこで本研究では、ラットを用いて、胎生後期から成熟するまでの間に、発熱物質による脳のPGE_2産生能、脳内PGE_2受容部位、PGE_2脳内投与による体温調節反応がどのように発達してくるのかを明らかにすることを目的とした。その結果、次のことが明らかとなった。 脳内PGE_2受容部位:1.ラットの脳のPGE_2受容体の密度は胎生末期(妊娠20日目-22日目;22日目に出生)には極めて低い。2.生後5日から7日にかけて脳全体にわたってPGE_2受容体の急激な増加がみられ、その後、一部の領域を除いて次第に低下していく。3.発熱に関与すると考えられている、第3脳室前壁部のPGE_2受容体は生後1日目から周囲の領域より高い密度で存在するが、日齢を追って増加していき、5週齢でほぼ成熟ラットと同様の密度に達する。 PGE_2脳内投与による体温調節反応:1.生後7日齢ラットの視床下部にPGE_2100ngを投与すると、緩やかな直腸温の上昇が見られた。しかし、その程度は成熟ラットと比較して弱いものであった。2.PG合成阻害剤で前処理した7日齢ラットでは、PGE_2100ng投与に対して約2.5℃の急激な直腸温上昇がみられた。このことから、生後7日齢ラットにおいてもすでにPGE_2感受性があることが明らかになり、さらに、視床下部破壊によるPGE_2生産能も7日齢において存在することが示唆された。
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