環境・情動ストレス関連物質の動態と視床下部生体警告情報処理機構の解析

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670095
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 清水 宣明 九州大学, 医学部, 講師 (50019634)
• 研究分担者: 片渕 俊彦 九州大学, 医学部, 助手 (80177401)
• キーワード: 拘束ストレス / 視床下部 / 内側前頭前野 / セロトニン / ノルアドレナリン / 脾臓交感神経 / マイクロダイアリシス / ナチュラルキラー細胞活性

研究概要

1.摂食行動調節機構に関する情動ストレスの関与を検討した結果以下の事が明かとなった。
(1)2時間の拘束ストレスによってその後12時間にわたって摂食量の有意な低下が起こる。この摂食行動の抑制はセロトニン1Aレセプターの特異的アゴニストである8-OHDPATを拘束ストレス前に投与することにより有意に減弱した。
(2)抗不安作用を有するdiazepam(DZP)の投与は短潜時で摂食行動を誘起するが、これはDZPのinverse agonistであり不安惹起作用を有するFG7142の投与で有意に拮抗された。FG7142単独投与でも投与量依存性に摂食行動が抑制された。これら拘束ストレス、FG7142投与で起こる摂食行動の抑制は、ソマトスタチンを脳室内へ前投与することにより投与量依存性に減弱した。
2.拘束ストレス後の視床下部外側野セロトニン(5-HT)及び内側前頭前野ノルアドレナリン(NA)の動態を脳マイクロダイアリシス法を用いて解析した。その結果、拘束ストレス後視床下部外側野で5-HTの遊離が有意に増加し、これはDZP前投与によりほぼ完全に阻害できた。また、内側前頭前野でのNAの遊離も拘束ストレスによって有意に増大するが、これはbenzodiazepine、CRF系によって修飾されている可能性が示唆された。
3.拘束ストレスによって脾臓でのNAの放出が有意に増大することを臓器マイクロダイアリシス法の開発により明らかにした。このNA放出増大は脾臓を支配する交感神経の切除によって有意に抑えられた。さらに拘束ストレスを負荷したときに免疫反応(NK)が低下し、これも脾臓交感神経の切除により有意に減弱する事を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Shimizu,N.: "In vivo measurement of hypothalamic serotonin release by intracerebral microdialysis:significant enhancement by immobilization sress in rats" Brain Research Bulletin. 28. 727-734 (1992)
• [文献書誌] Aoyagi,K.: "Concurrent measurement of serotonin metabolism and single neuron activity changes in the lateral hypothalamus of freely behaving rat" Behavioural Brain Research. 49. 205-212 (1992)
• [文献書誌] Shimizu,N.: "Electrophysiological study of neurotropin-induced responses in guinea pig hypothalamic neurons" Brain Research Bulletin. 29. 767-772 (1992)
• [文献書誌] 清水 宣明: "ラット拘束ストレスによる摂食抑制と視床下部セロトニン動態" 第12回日本肥満学会記録誌. 108-110 (1992)
• [文献書誌] 清水 宣明: "カルシトニンの作用:(4)中枢神経系に対する作用" The Bone. 6. 69-74 (1992)
• [文献書誌] 清水 宣明: "新しい空腹一,満腹物質" Clinical Neuroscience.
• [文献書誌] Oomura,Y.: "Processing and Inhibition of Nociceptive Information" Elsevier Science Publishers, 273 (1992)
• [文献書誌] Oomura,Y.: "Stress:Neuroendocrine and Molecular Approaches" Gordon & Breach Science Publishers, 510 (1992)