本研究で明らかにしたことは次の事項である。 Cell-attched modeによるCa^<2+>チャネル活動の記録・解析はチャネル機能を修飾する薬物・操作の評価に有用であることを先ず明らかにした。 この方法に従い実験をおこなって、以下の結果を得た。(1)心筋細胞Cキナーゼを活性化させるホルボーエステルの1つである12-O-tetradecanovlphobol-13-acetate(TPA)の単離ウサギ心室筋細胞のL-型カルシウムチャネル活動におよぼす影響を検討したところ、全く作用を示さない。(2)受容体を介してCキナーゼを活性化させるendot helin-1も心筋細胞L-型Ca^<2+>チャネル活動に無影響である。したがって、心筋細胞のCキナーゼは、たとえ活性化されても、L-型Ca^<2+>チャネルに直接的な、かつ、即時的な調節をおこなわないと結論された。 しかし、endothelin-1の陽性変力作用の解析から、遅延性に発現してくる収縮力の増加はCキナーゼの活性化と関係しており(Cキナーゼ阻害薬で抑制される事実)、かつ、L-型Ca^<2+>チャネル機能の亢進との関係を無視できない(L-型Ca^<2+>チャネル阻害薬であるnifedipineがこの遅延性の収縮力増加を抑制する事実)ことから、Cキナーゼ活性化は、まだ我々が知らない機構によって遅延性にL-型Ca^<2+>チャネル機能を修飾していると推測されるのである。それには次にあげる2つの可能性が考えられる。すなわち、(1)Endothelin-1投与直後に見られるCキナーゼの活性化が即時的ではなく、細胞内の複雑な情報伝達の過程を経て、Ca^<2+>チャネルの燐酸化・脱燐酸化のプロセスに影響する(例えば、脱燐酸化酵素活性の抑制)、(2)活動していない、言うなればsleepingしている状態にある、L-型Ca^<2+>チャネルがリクルートされる、である。この様な仮説の妥当性に関しては、今後の検証が必要であろう。
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