研究概要 |
アストロサイト初代培養細胞に種々の神経伝達物質受容体が発現することを見いだし、アストロサイトがニューロンの標的細胞であることを示唆した。さらに、1型培養アストロサイトにはヒスタミンH_2受容体が、2型にはH_1受容体が異なって分布し、二種のアストロサイトが機能的に分化していることを明らかにした。神経活性物質のプロスタグラジンについても1型アストロサイトにはFP受容体が、2型にはEP受容体が異なって発現した。アセチルコリン受容体に関しては,両者共にm3受容体を発現した。種々の神経伝達物質、神経活性物質に対して、個々の培養アストロサイトの反応性が異なり、アストロサイトの機能分化を明らかにした。ヒスタミンH_1受容体を介するアストロサイトのグリコーゲン代謝調節機構を明らかにするために、ラットC6アストロサイトーマ細胞にH_1受容体cDNAをトランスフェクションし、クローン化H_1受容体を恒常的に発現する細胞(C6-H1R細胞)を樹立した。C6-H1R細胞をヒスタミンで刺激すると、細胞内にイノシトールリン酸の蓄積と、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇がみられた。しかし、細胞内サイクリックAMPの蓄積には影響がなく、C6-H1R細胞にはイノシトールリン酸とサイクリックAMPの情報伝達系のクロストークは存在しなかった。ヒスタミンH_1受容体cDNAを用いるin situ hybridizationにより大脳皮質のアストロサイトにH_1受容体mRNAの発現が認められた。また、中枢と末梢においてヒスタミンH_1受容体遺伝子の転写機構が異なること、中枢にヒスタミンH_1受容体拮抗薬で標識されるH_1受容体以外の蛋白、即ち、シトクロームP450IIDファミリー蛋白の存在が明らかになった。
|