ウサギ門脈平滑筋細胞にKチャネル開口薬(pinacidil、lemakalim、nicorandil、LP805、Y26763)を投与すると約15pSのコンダクタンスを持つ単一K電流が記録できた。Cell-attachedの状態からinside-out状態にすると速やかにチャネルは不活性化されていった。今実験ではこの過程で細胞内にMgが存在するとinside-out作成直後にチャネル開口時間が一過性に延長することがわかった。Mgが無い条件では一過性の開口時間延長は観察されなかったことから、Mg依存性のチャネル活性抑制機構が細胞内に存在することが示唆された。GDPやその他の二燐酸ヌクレオチド(UDP、IDP、ADP)はKチャネル開口薬が存在しているときのみ一旦不活性化されたチャネルを開口する作用を持っていた。二燐酸ヌクレオチドのチャネル開口作用は細胞内側にMgが存在すると増加した。しかしMgのみを細胞内側に投与しても効果はなかった。またGDPβSはチャネル開口作用を持っていなかったので、一旦不活性化されたチャネルの再活性化は二燐酸ヌクレオチドがATP感受性Kチャネルに単純に結合することによるとは思われなかった。一旦不活性化されたチャネルに対してATPは効果を持たなかったが、Mgを同時に投与するとチャネルが再活性化された。このことからATPはチャネルに対し抑制的に働き、Mg-ATPはチャネル活性作用を有することがわかった。 以上の結果から、ウサギ門脈細胞のATP感受性Kチャネルは開口可能状態と開口不能状態を持ち、細胞内ヌクレオチドやMg濃度により状態が決定されると考えられた。ATPや二燐酸ヌクレオチドによるチャネル活性化にはヌクレオチドのhydrolysisが必要であり、Mgが増強効果を持つことからチャネルの燐酸化が一部関与する可能性が考えられた。
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