1.実験糖尿病ラツトの摘出心臓を用い、ノルエピネフリン(NE)付加低流量灌流時の左心室収縮弛緩機能不全と局所心筋エネルギー代謝異常に対するグリコーゲンと各種薬物の効果を検討し、非糖尿病心臓と比較した。 (1)糖尿病心臓のグリコーゲン含有量は、糖尿病期間に依存して増加した。この高濃度のグリコーゲンは、NE付加低流量灌流時に使用され、左心室拡張期ステフネス(Stiffness)増加の発現を遅らせる事に関与していると推察された。即ち、短時間の低灌流障害に対し防止的効果を及ぼすものと思われる。しかしながら、長時間の低灌流による障害は、糖尿病期間に依存して悪化する事がわかった。低灌流60分後には、左心室ステフネスの増加に相関した内膜下層心筋ATP含有量の減少がみられた。 (2)NE付加低灌流下のex vivoインシュリンは、内層心筋の水分含有量増加と共に心筋エネルギー代謝異常を一部改善し、ステフネスの増加を抑制した。この有益な効果は、非糖尿病心臓より糖尿病心臓で顕著であるが、高血糖下では、乳酸レベルの上昇と共に効果は減弱し、産生される乳酸濃度に依存することが示唆された。 (3)Ex vivoピルビン酸は、糖尿病心臓のNE付加低灌流時のステフネス増加の発現を遅らせ、有益な効果をもたらした。ピルビン酸脱水酵素活性化剤ジクロロ酢酸は、単独でもピルビン酸との併用でも効果は示さなかった。 (4)糖尿病治療薬グリブライドは、K^+チヤネル阻害によりNE付加低灌流時のステフネス増加の発現を促進させた。 2.糖尿病(6週間)ラツト摘出大動脈の電位依存性収縮は、非糖尿病のに比し減弱していたが、アドレナリン受容体を介する反応は同程度であった。 3.低流量灌流時の糖尿病心臓に対する各種生理活性物質の作用と局所心筋血流分布の変動についても検討中である。
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