ATPの非神経性遊離とそのシナップス調節機構への関与

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670132
• 研究機関: 福岡大学
• 研究代表者: 桂木 猛 福岡大学, 医学部, 助教授 (40004717)
• キーワード: モルモット回腸縦走筋 / モルモット精管 / 非神経性ATP遊離 / 伝達物質受容体刺激 / ectoATPase活性 / FFD / α,β-methylene ADP

研究概要

ATPの神経機能に関する研究は、現在、神経伝達物質として自律神経終末より遊離する可能性について多くの関心を集めている。報告者らは最近、ATPがα_<1->受容体およびM_<3->受容体刺激により各種平滑筋組織より非神経性に遊離することを見い出して来た。本研究において、このような受容体刺激により遊離したATPの代謝へのectoenzymeの関与、さらにはectoenzyme阻害剤などの影響について検討を行った。実験は、常法通り遊離ATPをluciferin-luciferase法によって定量した。モルモット摘出精管および回腸縦走筋標本において、それぞれnoradrenalineおよびbethanechol刺激によって引起こされるATP遊離に対してectoATPase阻害剤の1,5-difluoro-2,4-dinitro-benzene(FFD)および5'-fluorosulfonylbenzoyl adenosine(FSBA)は予期に反して、全く増加せず、むしろFFDはいずれも著しく抑制した。また、5'-nucleotidase阻害剤であるα,β-methylene ADPおよびadenosine取込み阻害剤のdipyridamoleによって、これらのATP遊離はほとんど影響を受けなかった。しかしながら、外液に加えられたATP(0.1μM)の経時的な減衰は両標本共にほぼ同程度(t_<1/2>=約1.7min)に見られたことより、ectoenzyme活性の存在は確認された。従って、以上の結果からこれらの被験薬は平滑筋由来のectoenzymesに対してほとんど阻害効果を有しないものと考えられる。ところで、FFDは、外因性ATPの分解には全く影響せず、受容体刺激時のATP遊離のみを特異的に抑制することより、本剤は、ATPの非神経性遊離機構の解明に対して有効なtoolとなる可能性が示唆されるので、現在、平滑筋由来のATP遊離に対するFFDの抑制作用機序の詳細な検討を行なっている。

研究成果

• [文献書誌] T.Katsuragi,O.Soejima,T.Tokunaga,T.Furukawa: "Evidence for postjunctional release of ATP evoked by stimulation of muscarinic receptors in ileal longitudinal muscles of guinea pig." J.Pharmacol.Exp.Ther.260. 1309-1313 (1992)
• [文献書誌] T.Katsuragi,T.Tokunaga,M.Ohba,C.Sato,T.Furukawa: "Heterogeneity in extraneuronal ATP release from atrial and papillary muscles of guinea pig." Int.J.Purine & Pyrimidine Res.3. 24- (1992)
• [文献書誌] T.Katsuragi,K.Shirakabe,O.Soejima,T.Tokunaga,K.Matsuo,C.Sato,T.Furukawa: "Possible transsynaptic cholinergic neuromodulation by ATP release from ileal longitudinal muscles of guinea pig." Life Sci.
• [文献書誌] T.Tokunaga,T.Katsuragi,T.Furukawa: "Origin of ATP release by isoproterenol forskolin and ouabain from guinea pig atrium." J.Pharmacol.Exp.Ther.