研究概要 |
平成5年度の研究は伝達物質受容体刺激により非神経性に遊離したATPの生理的役割を明らかにする目的で以下の実験が行われた。 モルモット回腸縦走筋標本の電気刺激によるACh遊離をHPLC-ECD法で測定し、これに対するalpha,beta-methylene ATP(alpha,beta-mATP,P_2-受容体刺激薬)の効果を検討したところ、本剤はACh遊離を抑制した。この抑制作用はtheophylline(P_1-受容体遮断薬)によって、さらにはsuramin(P_2-受容体遮断薬)およびalpha,beta-methylene ADP(ecto-5′-nucleotidase阻害剤)によって拮抗された。またalpha,beta-mATP存在下の同標本からのATP遊離実験で、これは、Ca^<2+>除去やatropineで影響されず、suraminによって拮抗されることより、P_2-受容体刺激による平滑筋由来のATP遊離であることが確認された。従ってこれらの結果から、副交感神経からのACh遊離にalpha,beta-mATPによる抑制作用のメカニズムとして、本剤が後シナップスP_2-受容体を刺激し、非神経性にATPを遊離させ、このATPはectoenzymesによってadenosineまで代謝され、このadenosineが副交感神経終末のPP_1-受容体に作用して、いわゆるtrans-synaptic neuromodulationを引起したものと考えられる(Life Sci.53,911,1993)。次いで、モルモット心房筋の電気刺激実験で、isoproterenolおよびforskolinによって収縮力の増大とATP遊離の増加が見られたが、同じく心室筋では、これらの刺激によって収縮力は増大したにもかかわらずATP遊離はほとんど変化しなかった。一方、心房筋標本へのadenosine投与では1〜100muMまで濃度依存性に収縮力の抑制を示したが、心室筋に対してはadenosineの100muMでも全く収縮抑制は認められなかった。これらのことより、心房筋から遊離したATPは細胞外のectonucleotidasesによってadenosineに分解され、これがP_1-恐らくA_1-受容体を介して収縮抑制を示したものと考えられる(Life Sci.53,961,1993)。
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