研究概要 |
非神経性に遊離したATPの生理的役割を明らかにするために計画された実験によって得られた結果を以下に示すように項目別にまとめて報告する。 後シナップス性遊離ATPのectoenzymeによる代謝実験 モルモット精管および回腸縦走筋標本をbath中に懸垂し、これにATP(10^<-7> M)を加えてその経時的変化をIuciferin-Iuciferase法で測定した結果、いずれの標本でも投与後15分でほぼATPは完全に失活した。両標本でのATP減衰曲線に対してecto-ATPase阻害剤(FSBAとDFDNB)およびecto-5'-nucleotidase阻害剤(α,β-methylene ADP)はほとんど影響しなかった。一方、両標本からの刺激薬による遊離ATPい対して、これら阻害剤はほとんど影響せず、DFDNBはむしろ逆に抑制を示したが、これは、平滑筋からのATPの遊離阻害に基づくものと考えられる。 後シナップス性遊離ATPによるACh遊離抑制実験 モルモット回腸縦走筋標本の電気刺激によるACh遊離をHPLC-ECD法で測定し、これに対するα,β-methylene ATP(α,β-mATP,P_2-受容体刺激薬)の効果を検討したところ、本剤はACh遊離を抑制した。この抑制作用はtheophylline(P_1-受容体遮断薬)によって、さらにはsuramin(P_2-受容体遮断薬)およびα,β-methylene ADPによって拮抗された。またα,β-mATP存在下の同標本からのATP遊離実験でこれは、Ca^<2+>除去やatropineで影響されず、suraminによって拮抗されることにより、P_2-受容体刺激による平滑筋由来のATP遊離であることが確認された。従ってこれらの結果から、副交感神経からのACh遊離にα,β-mATPによる抑制作用のメカニズムとして、本剤が後シナップスP_2-受容体を刺激し、非神経性にATPを遊離させ、このATPはectoenzymesによってadenosineまで代謝され、このadenosineが副交感神経終末のP_1-受容体に作用して、いわゆるtranssynaptic neuromodulationを引起したものと考えられる(Life Sci.53,911,1993)
|