研究概要 |
リボソームRNA(rRNA)合成開始複合体を形成するためには、UBF(Upstream Binding Factor)とSL-1の2種類のDNA結合蛋白質(複合体)が必要である。 本年度は、UBFのゲノム遺伝子の構造を明らかにし、転写開始点の上流約2300塩基を含む領域及びその5'側とその3'側の一部の領域のプロモーター活性を検討した。転写開始点から-1200ntの領域にプロモーター活性が見られたが、特に-1182ntと-1045nt、-903ntと-795nt、-265ntと-68ntの間の領域が大きな影響を与えていることがわかった。この領域にはGCボックス配列及び数種のserum response配列が存在している。また、この領域にはTATAボックス及びCATボックスの配列は存在しない。静止期の培養細胞に増殖刺激を与えることにより、UBFの転写量が約4倍に上昇した。これらの事から、UBF遺伝子は、血清の細胞増殖誘導に対応して発現誘導されるハウスキーピング遺伝子の一つであり、数種の特異的配列により総合的に発現制御されていることが明らかになった。 一方、SL-1はTATA結合蛋白質(TBP)を含む少なくとも110,65,53,50kDの5種の蛋白質(TFA)からなる複合体活性であることを明らかにした。SL-1とUBFの結合は強いが、TBPとUBFの結合は弱いことから、UBFはTFAを介して結合していると推定された。TBPの抗体により、in vitro系でrRNA合成が阻害されることから、TBPがrRNAのプロモーターに結合することがrRNA合成開始複合体の形成の第一段階と結論された。
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