研究概要 |
タンパク質生合成におけるリボソームRNA(rRNA)の役割が注目されており、その機能構造の解明が待たれている。通常、rRNAの高次構造はリボソームタンパク質との結合によって調整を受け安定化していると考えられ、各結合タンパク質のRNA結合機構およびそれによって誘発されるRNAの高次構造が重要な問題になっている。我々は、翻訳過程のGTP水解反応に関与すると考えられている28S rRNA中の"GTPaseドメイン"(ラット28S rRNAでは塩基1841-1936部位)に注目し、RNAータンパク質相互作用および高次構造の解析を行なっている。これまでの研究で、このドメインにリボソームタンパク質L12およびPタンパク質複合体が結合すること、また、この部位が抗RNA自己抗体(抗28S)の標的になっており、この抗体の結合によってリボソームの活性が完全に抑待されることを証明してきた。本年度は主にRNAの化学修飾による分析を行ない、以下に示すようにGTPaseドメインの二次構造、および抗28S RNA自己抗体のエピトープ、さらにリボソームタンパク質や伸長因子EF-2との相互作用など、このRNAドメインの構造と機能に関する新しい知見を得た。 1.RNAの一本鎖部分の塩基と優先的に反応する試薬dimethyl sulfate,水溶性carbodiimide,kethoxalとの反応性からGTPaseドメインの二次構造を推定したところ、Schmickelらが組んだモデルを支持した。 2.抗28SはGTPaseドメイン中のG-1878を含むループ部分の化学修飾を保護し、本抗体のRNA上のエピトープが明らかになった。 3.1.の試薬およびRNA骨格のリン酸基の修飾試薬であるethylnitrosoureaを用いたフットプリント法による解析からリボソームPタンパク質はA-1859周辺のinternal loopに、またL12タンパク質はU-1871バルジ部分を中心としたステムの骨格構造を認識することが判明した。 4.EF-2はGTPaseドメイン中でG-1878の一か所を保護し、この部位がEF-2の作用部位であることが示された。
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