リボソームRNAは系統的に大変良く保存されており、タンパク質合成におけるその直接的役割を探ることは、生命の起源の問題に対するヒントを提供するものとして最近注目をうけている。我々はこれまで動物リボソームの28SrRNAの一つの機能ドメインを認識する自己抗体(抗28S)をSLE患者の血清より発見し、これをプローブとしてこの抗原RNAドメインの構造と機能の解析を行ってきた。これまでの研究で、このドメインがタンパク質合成にカップルしたGTP水解反応に直接関与することを明らかにしてきた。平成5年度は、このドメイン(GTPaseドメイン)の構造とエピトープの解析を主に行い、以下に示すような成果が得られた。 1.各種deletion mutantを作製することにより、抗体が認識できる高次構造を保持する最小のRNA断片を検索した。その結果、ヒト28SrRNAの塩基1943-2000部位を含む断片がその最小ユニットであり、それ以上削除すると抗体の結合能は失われた。 2.1)で決められた最小RNA断片をT7 RNAポリメラーゼを用いた転写系により大量に合成し、NMRによる高次構造解析をおこなった(東京大学理学部横山研究室との共同研究で、目下部分的なデータが得られている)。 3.抗体によるfoot-printingの解析により、GTPaseドメイン中の塩基G-1878を含む4塩基が抗体との結合に関与することが判明した。 4.抗28Sは真核生物のRNAに特異的であるが、mutagenesisによる解析によって、3)で同定された塩基のうちG-1878がこの特異性の原因となっていることが判明した。
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