両端にPRC用のプライマー部分を持ち中央に20塩基対のランダムな配列を導入したDNAを合成し、マウスの精製したRBP-Jk蛋白質と反応させてゲルシフトアッセイで蛋白質に結合したオリゴマーを回収しPCRで増幅する。このステップを繰り返してRBP-Jk蛋白質に強く結合するオリゴマーを得てその配列を決定したところ、結合オリゴマーはCGTGGGAAをコンセンサスとする配列を共有していることが明らかになった。このようにして得られたオリゴマーを標識してプローベとしゲルシフトアッセイを行なったところ、コンセンサス配列に近い配列を持つオリゴマーほど強く結合し、V(D)J組換えのシグナル配列プローベに比べて最大12倍強く結合した。この結果は、RBP-Jk蛋白質の認識配列はV(D)J-組換えのシグナルそのものではなくCGTGGGAAをコアとする配列であることを示している。このコア配列は、転写因子NF-kBの認識配列と類似している。実際、マウスのb-2-ミクログロブリン遺伝子プロモーターのNF-kB配列はRBP-Jk蛋白質と結合した。さらに、この配列に類似した配列をプロモーター領域に持つ遺伝子を核酸のデータベースの中から検索したところ、ショウジョウバエのEnhancer of Split遺伝子群のm8遺伝子がこの配列を持っていることが明らかになった。m8遺伝子は末梢神経系の発生に関与するneurogenic遺伝子の一つであり、遺伝学的解析からRBP-Jk遺伝子機能の標的遺伝子である可能性が高いことが示されている。これらの結果はRBP-Jk蛋白質は転写因子として機能している可能性を強く示唆している。
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