研究概要 |
アデニル酸キナーゼ(AK)は生体の運動、代謝、増殖、分化といった活動を通じて細胞内アデニンヌクレオチド組成の維持に働く重要な酵素の一つである。脊椎動物のAKには3つのアイソザイム(AK1,AK2,AK3)が存在する。AK1は骨格筋、脳の細胞質内に存在し、AK2は肝臓、腎臓、心臓などのミトコンドリア内外膜間に存在する。AK1とAK2はMg^<2+>ATP+AMP(〕 SY.dblharw. 〔)Mg^<2+>ADP+ADPの反応を触媒する。これに対し、AK3はMg^<2+>GTP+AMP(〕 SY.dblharw. 〔)Mg^<2+>GDP+ADPの反応を触媒し、ほとんどの組織のミトコンドリアマトリックスに存在している。これらのアイソザイムの生理的意義を解明することが本研究の目的である。このために酵素の組織分布・細胞内局在化の機構を明らかにする必要があり、アイソザイム遺伝子を単離し、その発現機構を検討した。本年度ではヒトAK3遺伝子の5'側発現調節領域の単離・構造解析に引き続き、機能解析を行なった。ヒトとウシの5'側発現調節領域の比較検討から、翻訳開始点から約600bp内に相同性の強く保存された12〜14bpの部分が4ケ所存在することを見いだすとともに、CATレポーターアッセイによるAK3遺伝子のプロモーター活性の測定ならびにAK3遺伝子5'側発現調節領域DNA断片による細胞内拮抗活性の検討の結果、先の相同性の高く認められた4ケ所の部分はAK3遺伝子の転写活性に主として働いている転写因子の結合部位として働くシスエレメントであること明らかにした。しかもこれらのDNA配列は既知のシスエレメントではないことから、新規の転写調節因子の存在を示唆するとともにハウスキーピング型遺伝子の発現調節における未知の機序の存在を示した。これらの結果を踏まえて、今後はAK3遺伝子を用いて、ハウスキーピング型遺伝子の発現調節における未知の機序の解析とその担い手である新規の転写調節因子の分離・同定が重要な研究課題となると考えている。
|