研究概要 |
アデニル酸キナーゼ(AK)は細胞内アデニンヌクレオチド組成の維持に働く重要な酵素の一つである。脊椎動物のAKには3つのアイソザイム(AK1,AK2,AK3)が存在する。AK1は骨格筋、脳の細胞質内に存在し、AK2は肝臓、腎臓、心臓などのミトコンドリア内外膜間に存在する。AK1とAK2はMg^<2+>ATP+AMP(〕 SY.dblharw. 〔)Mg^<2+>ADP+ADPの反応を触媒する。これに対し、AK3はMg^<2+>GTP+AMP(〕 SY.dblharw. 〔)Mg^<2+>GDP+ADPの反応を触媒し、ほとんどの組織のミトコンドリアマトリックスに存在している。これらのアイソザイムの意義は現在のところ明らかになっていない。AKアイソザイムの生理的意義を解明することが本研究の目的である。このために酵素の組織分布・細胞内局在化の機構を明らかにする必要があり、アイソザイム遺伝子を単離し、その発現制御機序を検討した。本研究ではヒトAK1とAK3各遺伝子の5'側発現調節領域の単離に成功し、構造・機能解析を行なった結果、AK1遺伝子については、この遺伝子の5'側にTATAボックスを有し、筋組織特異的誘導能を有することが明らかになった。AK3遺伝子については、TATAボックスやCATボックスが存在せず、GC含有率が71%と高いことが分かった。臓器や発生時期の違いによるそれぞれの遺伝子の発現のパターンの検討結果から、AK1とAK2については組織特異的発現が認められるのに対して、AK3は遺伝子構造上の特徴とよく一致した構成的発現が認められた。またAK3遺伝子については、翻訳開始点から約600bp内にヒトとウシで相同性の強く保存された12〜14bpの部分が4ケ所存在することを見いだすとともに、プロモーター機能の検討の結果、相同性の高い部分は転写制御領域を含んでいることが分かった。これらは既知のものではないことから、新規の転写調節因子の存在を示唆するとともにハウスキーピング型遺伝子の発現調節における未知の機序の存在を示した。
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