我々が単離同定したIsk蛋白は、130個のアミノ酸から成り、唯1個の推定膜貫通部位しか持たず、電位依存性に緩徐に活性化されるK^+イオン透過活性を有し、既知のイオンチャンネルとは全く相同性を示さない新しい膜蛋白である。またIskは非興奮性の腺上皮細胞に局在する。このように、既知のチャンネルとは構造、機能、発現分布が異なり、単純な構造を持つ本蛋白のイオン透過の分子機構を明かにし、その生理的意義を追究する目的でIsk cDNAに部位特異的変異導入を行ない、各々の変異蛋白のチャンネル活性を卵母細胞発現系を用いて電気生理学的に解析した。その結果、N末側30個と94番目以降のC末側37個のアミノ酸を除いた、最小63個のアミノ酸から成る配列がチャンネル活性の発現に充分な最小機能単位であることが明かになった。さらに、その中の個々のアミノ酸の置換では、C末側の特定の荷電アミノ酸がチャンネル活性に強い影響を及ぼし、とくに膜貫通部位の単一アミノ酸置換(52番目のLeuをIleに置換)では、チャンネル活性のキネティクスの解析からチャンネル開口の時定数の変化が明らかになった。従って、Isk蛋白それ自体がチャンネルを構成することを強く支持する結果が得られた。さらにバクロウイルスと昆虫細胞を用いた発現系やCHO細胞等の動物細胞の発現系を確立し、単一チャンネルレベルでの電気生理学的解析も試みたが、未だ陽性の結果は得られていない。一方、Isk類似蛋白の遺伝子を分離する目的で、推定膜貫通部位を含む保存された50個のアミノ酸配列の一部に対応するcDNAをプローブに用いた遺伝子DNAのハイブリダイゼーション等を行なって、得られたクローンの塩基配列を決定したが、Isk以外に意味のあるアミノ酸配列をコードする遺伝子は得られなかった。
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