研究概要 |
マウス胚性腫瘍細胞株F9の分化系とプロモータートラップ法を用いて、未分化細胞特異的な発現を示す遺伝子群の検索を行ない、これまでに4種を単離した。その内の一つ、G19遺伝子は“zinc finger"構造を有する新しいDNA結合蛋白質をコードしている可能性が示唆された。今年度は、G19蛋白質の機能を明らかにする目的で以下の実験を行なった。 1)G19蛋白質をglutathione-S-transferaseとの融合蛋白質(GST-G19)として大腸菌内で発現させる系を確立した。アフィニティ精製したGST-G19蛋白質と結合配列検索用オリゴヌクレオチドを用いてDNA/蛋白質結合実験を行ない、G19蛋白質の結合標的配列を検索した。その結果、8塩基からなるコンセンサス配列が得られた。 2)G19にはサイズの異なる3種のmRNA(1.8 kb, 3.2 kb, 5.0 kb)が存在するが、これらmRNAに対応するcDNAを単離し塩基配列構造を比較した結果、3′非翻訳領域の配列や長さに違いが見られたが、翻訳領域の構造は3者で完全に一致していた。 3)G19蛋白質の機能を解明する為には、遺伝子の発現調節機構を明らかにすることも重要である。そこでまず、1.8 kb大のG19 mRNAに対するマウス染色体DNAを単離してその構造を決定した。マウスG19遺伝子は約8 kb大で、3個のイントロンと4個のエクソンより構成されていた。5′上流領域の配列はGCに富み、典型的なTATA boxやCAAT boxは認められなかった。 4)G19蛋白質の細胞内局在を解析する為に、G19 cDNAの塩基配列から予想されたアミノ酸配列を基に合成ペプチドを作製し、これを用いてG19蛋白質に体する抗体を調製した。
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