これまでに、マウスF9細胞の分化系とプロモータートラップ法を用いて、未分化細胞特異的な遺伝子Zfp-57を単離した。その遺伝子産物はDNA結合蛋白質としての構造的特徴を有しており、胚性腫瘍細胞の未分化状態維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。そこで今年度は、Zfp-57蛋白質の機能を明らかにする為に以下の実験を行なった。 1)Zfp-57蛋白質に対するポリクローナル抗体を用いて免疫染色を行ない、この蛋白質未分化F9細胞における細胞内局在を検討した。その結果、Zfp-57蛋白質はF9細胞の核にのみ検出され、レチノイン酸で分化誘導したF9細胞では核、細胞質ともに認められなかった。 2)マウス胎生期におけるZfp-57遺伝子の発現をノーザンブロット法により解析した。Zfp-57遺伝子は12日目までの胎児では弱くしか発現していないが、13日目の胎児では強い発現が認められ、これをピークに以後著明な減少を示した。 3)Zfp-57遺伝子の発現が強く認められた13日目の胎児の凍結切片を作製し、免疫染色法により、Zfp-57蛋白質の発現部位を解析した。その結果、副腎、交感神経節、脊髄神経節、皮膚色素細胞、等の神経冠細胞由来の細胞に特徴的な局在を示した。さらに、16日目の胎児の副腎ではZfp-57蛋白質は消失して発現いるなど、Zfp-57遺伝子の発現の時期は神経冠が移動して上記組織が形成される時期とほぼ一致していた。
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