1.マウス胚性腫瘍細胞株F9に、ネオマイシン耐性遺伝子を選択マーカーに持つプロモータートラップ用ベクターを導入して、宿主遺伝子の制御下に未分化特異的にネオマイシン遺伝子を発現する細胞株4種を確立した。この内の一つ、G19株を用いて、未分化細胞特異的な発現を示す遺伝子Zfp-57を単離した。 2.Zfp-57遺伝子はサイズの異なる2種の転写産物を生じ、これらは分化誘導後短時間内に著明な減少を示した。また、2種のRNAに対するcDNAを単離して塩基配列構造を比較した結果、翻訳領域は両者で完全に一致しており、3'非翻訳領域の長さや塩基配列のみが異なっていた。Zfp-57 cDNAは421個のアミノ酸からなる、非常に塩基性の高い蛋白質をコードしており、複数個のzinc finger構造を有していた。 3.成体マウス臓器におけるZfp-57遺伝子の発現は精巣でのみ認められ、マウス胎生期においては胎齢中期に特異的であった。 4.Zfp-57蛋白質の細胞内局在を検討する為、合成ペプチドに対する坑体を作製した。これを用いて免疫染色を行なった結果、Zfp-57蛋白質は未分化F9細胞の核に認められ、分化誘導したF9細胞では検出されなかった。 5.13日目のマウス胎児切片を用いて、胎生期における発現部位を検討した。その結果、副腎や神経節など、神経冠細胞由来の組織で特異的に発現が認められた。
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