ナトリウムポンプα2サブユニット遺伝子の筋分化に伴う転写制御機構を知る目的で、本遺伝子の連続欠失変異遺伝子を作成し、10T1/2細胞に筋分化マスター遺伝子であるNyoDとともに形質転換を行い、転写制御領域の同定を行った。同時にL6筋芽細胞にも連続欠失変異遺伝子を形質転換し、転写制御領域を解析した。両細胞とも、-175から-108の間に8〜10倍転写を促進する領域が存在することがわかった。本領域には2つのE-box配列と1つのSp1結合コンセンサス配列とGGGAGG配列が存在したので、各部位特異的な変異を導入し、制御エレメントを詳細に解析した。その結果、L6細胞では上流のE-boxが負の制御エレメントとして作用し、Sp1コンセンサス配列とGGGAGG配列とを含む領域が正の転写制御エレメントとして作用することが明らかになった。各エレメントを通じて作用する転写因子を同定するためにL6細胞株抽出液を調製し、制御領域DNA断片(-175〜-104)をプローブにゲルシフト法、DNaseIフットプリント法、メチル化干渉法にて結合因子を解析したところ、2つのE-boxに結合する因子の存在、及びSp1コンセンサス配列とGGGAGG配列両者にわたる広い結合領域にSp1が結合することを見出した。これらの因子の結合様式と蛋白質間相互作用の様式と転写制御とのかかわりについて今後分子レベルでの解析を進める予定である。
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