研究概要 |
これまでに次の様な研究成果をえている。 (1)ガングリオシドGM3,GM2,GD3を各々マウス腫腔内に20日間連続投与した。投与後,脳の酵素活性の動態を調べた。GM3(A代謝系)投与群ではシアリダーゼ,グルコシダーゼ,フコシダーゼとアミノペプチダーゼの活性変化がともにみられた。GM2(A代謝系)投与群ではアミノペプチダーゼのみを中心とした酵素活性低下が特徴的であった。GD3(B代謝系)投与群ではシアリダーゼ,グルコシダーゼ,フコシダーゼを中心に酵素活性の増加が特徴的であった。多変量解析の結果,これらの変化は各々のガングリオシドに固有のものであり,さらに,ガングリオシド代謝系(A系,B系)とも関連づけうる可能性が示唆された。 (2)酵素阻害物質の生理的役割を明らかにすると共に,治療への新しいアプローチを目的とした研究の一環として酵素阻害物質を長期間投与することにより誘起される各臓器内の酵素活性の変動を調べた。各種グリコシダーゼ阻害物質を長期間投与することにより脳内グリコシダーゼ活性に変動が起こることを認めた。シアスタチンBおよびピリジンドロールは濃度に依存して増加させることを認めた。in vitroの抗酵素スペクトラムでは理解できない酵素活性の変動がin vivoで,誘起されることを見出した。脾内酵素活性の変動におよぼすGM1投与量の変化を検討した。各種の酵素活性の変動を調べた結果,投与したGM1の量に依存し,かつ至適投与量のあることを示唆した。Asialo-GM1より効果が少ないことは非常に興味深い知見で,糖鎖構造の特異性を示唆した。この知見を基にして,生理活性物質としてのガングリオシドの役割について今後検討する。
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