生理活性脂質の生合成と作用機序

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670158
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 和泉 孝志 東京大学, 医学部(医), 助手 (70232361)
• 研究分担者: 本田 善一郎 東京大学, 保健センター, 助手 (70238814) ; 清水 孝雄 東京大学, 医学部(医), 教授 (80127092)
• キーワード: 生理活性脂質 / ロイコトリエン / 血小板活性化因子 / 生合成酵素 / 受容体 / 情報伝達

研究概要

生理活性脂質の生合成酵素および受容体に関する研究を行い以下の知見を得た。
1.ロイコトリエン(LT)生合成酵素の精製および性質についての検討
LTC_4合成酵素(モルモット肺)の部分精製標品を用いて、酵素活性の免疫沈降反応を指標にモノクローナル抗体を作成した。現在この抗体を用いて酵素精製を行っている。LTA_4水解酵素酵素の変異体を作製することによって、この酵素の持つ2つの活性(LTB_4生成およびアミノペプチダーゼ活性)を分離することに成功した。今後さらに本酵素の性質についての研究を進めていく予定である。
2.ロイコトリエンの作用機序に関する研究
アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた電気生理学的な方法で、ロイコトリエンB_4受容体のcDNAクローニングを目指している。ロイコトリエンD_4受容体については、卵母細胞自体に発現している可能性が考えられ、電気生理学的な方法ではcDNAクローニングが困難なことが判明したので、COS細胞を用いた放射標識リガンドの結合による遺伝子クローニングを検討している。アフリカツメガエルの卵母細胞にはエネルギーに依存したLTB_4の輸送機構が存在することを明かにした。
3.PAF受容体に関する研究
COS細胞にモルモット肺のPAF受容体を哺乳動物細胞に発現させ、PAF刺激による細胞内カルシウム、アデニル酸シクラーゼ、アラキドン酸遊離などを指標に細胞内情報伝達機構の解明を行った。好酸球性白血病細胞から確立されたEoL-1細胞を用いて同様の細胞内情報伝達機構の解明を行い、百日咳毒素による受容体とGTP結合蛋白質とのカップリングを解析した。Cross-hybridizationによりEoL-1細胞中にPAF受容体のサブタイプが存在するかどうかを検討し、白血球と同じ受容体を見い出した。ラット脳に機能的なPAF受容体が存在することを明らかにした。5'ー非翻訳領域の違いによって2種類のPAF受容体のmRNA(心筋タイプと白血球タイプ)が存在することを発見し、現在ゲノムを解析中である。

研究成果

• [文献書誌] Shimizu,T.: "Platelet Activating Factor Receptor and Signal Transduction." Biochem.Pharmacol.44. 1001-1008 (1992)
• [文献書誌] Bito,H.: "Platelet-Activating Factor(PAF)Receptor in Rat Brain:PAF Mobilizes Intracellular Ca^<2+> in Hippocampal Newrons." Neuron. 9. 285-294 (1992)
• [文献書誌] Minami,M.: "Leukotriene A_4 hydrolase,a bifunctional enzyme:Distinction of leukotriene A_4 hydrolase and aminopeptidase activities by site-directed mutagenesis at Glu-297." FEBS. 309. 353-357 (1992)
• [文献書誌] Izumi,T.: "Site-directed mutagenesis of leukotriene A_4 hydrolase:distinction of leukotriene A_4 hydrolase and aminopeptidase activities." J.Lipid Mediators. (1993)
• [文献書誌] Mori,M.: "Energy-dependent export of leukotriene B_4 in Xenopus oocytes." Biochim.Biophys.Acta. (1993)
• [文献書誌] Izumi,T.: "Frontiers and new horizons in amino acid reserch(ed.by Takai,K.)" Elsevier(Amsterdam), 705 (1992)