研究概要 |
プロテインキナーゼC(Cキナーゼ)は細胞周期の調節をはじめ分泌・放出など多彩な生命現象に深く関わっており、その直接の作用点である基質蛋白質の解析はきわめて重要な課題である。私どもはアフリカツメガエル卵母細胞を材料に細胞周期の調節機構を解析中、偶然にも細胞質に存在する分子量25,000の蛋白質(25kDa蛋白質)が試験管内での反応でCキナーゼやカゼインキナーゼIIのきわめてよい基質であることを見いだした。そこでこの蛋白質の構造と機能を解析する目的で、まず精製方法の確立を試みた。当初種々のカラムクロマトグラフィーを組み合わせた方法を用いていたが、途中で蛋白質分解酵素の作用と思われる低分子量の燐酸受容蛋白質が検出されたため精製方法の改良を試みた。本蛋白質が熱安定性であることを利用し熱処理後の可溶性画分を陰イオン交換クロマトグラフフィーで精製したところほぼ均一な標品を得ることができた。収率は60%以上と非常に高く、きわめて簡単な操作で多量の精製蛋白質を得ることが可能となった。またゲル濾過カラムによる解析から25kDa蛋白質は単量体として存在していることが示され、ストークス半径は24.5Aと計算された。一方この蛋白質の細胞内分布を検討した結果卵黄画分に最も多いが、この活性は界面活性剤で抽出することによって初めて検出可能であった。次いで細胞質、ミクロゾーム、細胞膜画分の順に量的に多く分布していることが示された。今後この25kDa蛋白質の機能と燐酸化反応の意義についてさらに解析する必要がある。 またCキナーゼの分解反応(ダウンレギュレーション)は細胞増殖の異常時に認められる現象であるが、この反応には細胞内Na^+流入が重要であることがホルボールエステルで刺激したHL60細胞で証明された。
|