研究課題
Batten病は神経細胞およびその他の細胞にセロイド様リポフスチンが蓄積するのを特徴とする原因不明の一群の先天性神経変性疾患である。モデル動物の蓄積物の解析から蓄積蛋白の主体はミトコンドリアATP合成酵素のサブユニットcであることが明らかになった。我々はBatten病患者脳および繊維芽細胞でサブユニットcのみが蓄積していることを生化学的および形態学的に証明した。サブユニットc蓄積の場をパコール密度勾配遠心で調べると、ミトコンドリア蛋白であるオルニチンアミノ基転移酵素、複合体IIのサブユニットIVは正常細胞、患者細胞ともミトコンドリアのみに局在しているのに対して、サブユニットcは正常細胞ではミトコンドリアに、患者細胞ではミトコンドリアとリソソーム両方に分布していた。サブユニットcの生合成からミトコンドリアへの輸入のプロセスを繊維芽細胞を用いてパルス-チェイス実験で調べた。まだ予備的な段階であるが、5および10分のパルスですでに成熟型のサブユニットcが正常、患者細胞ともに検出され、生合成速度にも両者間には大きな差はなさそうである。さらに生合成速度、細胞内移行、ミトコンドリア内でのアセンブリーの異常の有無を詳しく調べる予定であるが、ここまでの検討ではこれらの段階には異常がなさそうである。サブユニットcの分解速度を調べると、患者細胞では明らかな分解の遅延がみられた。さらに例数を増やして検討する予定であるが、サブユニットcの分解の異常が本症におけるサブユニットc蓄積の原因である可能性は極めて高い。しかし、その異常がミトコンドリア内にあるのか、リソソーム内にあるのかはわからない。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)